ドラマ『あすなろ白書』を30年ぶりに観たら思ってたのと違った話。ドロドロの愛憎劇だった件。

ドラマ『あすなろ白書』を30年ぶりに観たら思ってたのと違った話。ドロドロの愛憎劇だった件。

「俺じゃダメか?」

あの伝説のセリフと、ヒロインを後ろからギュッと抱きしめる「あすなろ抱き」。1993年、日本中に一大ブームを巻き起こし、最高視聴率31.9%を記録した伝説の月9ドラマ『あすなろ白書』。

当時小学生だった私も、藤井フミヤさんの名曲『TRUE LOVE』の切ないイントロと共に、「なんてピュアで、綺麗で、切ない青春ラブストーリーなんだろう」という淡い記憶をずっと胸に抱き続けてきました。

そんな中、先日テレビで放送されていた「ドラマの名場面集」みたいな特番で、久しぶりに『あすなろ白書』の映像が流れたんです。 それを横で一緒に見ていた中学生の娘が「これ、おもしろそう!観てみたい!」と一言。

今の時代、サブスクのネット配信でサクッと観られるだろうと思いきや、なんとどこも配信していない……! どうしても観たくなった私たちは、じつに何年ぶりかにTSUTAYAでDVDをレンタルしました。

観る前、私は娘にドヤ顔でこう説明していました。「ママが子どもの頃に大流行した、すっごくピュアなラブストーリーなんだよ」と。

そうしてワクワクしながら、じつに30年ぶりに再生ボタンを押したのですが……。

……結論から言いましょう。 開始早々、「どこがピュアやねん!!!」と画面に向かって盛大にツッコむハメになりました。

私の記憶は、30年という歳月の間で死ぬほど美化されていました。 画面の向こうに広がっていたのは、爽やかな青春などではなく、人間のエゴと、めんどくささと、ドロドロの愛憎が渦巻く、超ヘビー級の泥沼人間ドラマだったのです。

目次

衝撃の事実:伝説の「あすなろ抱き」、まさかの第2話で消化事件

ちなみに本作は、大学のサークル「あすなろ会」で出会った男女5人の若者たちが、恋に友情に悩みながら成長していく……というお話。のはずでした。

まず、30年ぶりの再履修で、娘の前で私が一番ひっくり返りそうになった大事件からお話しさせてください。

世間一般で『あすなろ白書』といえば、木村拓哉さん演じる取手くんが、ヒロインのなるみ(石田ひかり)を後ろから抱きしめる「あすなろ抱き」があまりにも有名ですよね。平成のドラマ史に残る胸キュン名シーンであり、物語のクライマックスを彩る大サビのような存在だと、誰もが思っているはずです。

娘にも「ここが一番キュンとするところだから!」なんて期待を持たせていたのですが、いざ再生してみたら、開いた口が塞がりませんでした。

「いや、前半の第2話でもうやってるんかい!!!」

そう、あの大金星の胸キュンシーンは、物語が始まってソッコーで消費されていたのです。私はこの30年間、あのわずか数分のキュンシーンの余韻だけで、ドラマ全体を勝手に「爽やか胸キュン名作」へと脳内変換していたわけです。人間の記憶の美化能力、恐るべし。

しかも、その胸キュンの余韻に浸る間もなく、物語はすぐに中学生の娘に見せるには少々ハラハラする、ドロドロの展開へと突入していくのでした。

掛居くんのヤバい女ホイホイと、なるみの激重ムーブ

さて、第2話で早くも「あすなろ抱き」という最大の癒やしイベントを消化してしまった我が家。そこから先に待っていたのは、今の地上波では間違いなくBPO(放送倫理・番組向上機構)が飛んできそうな、アクセル全開のドロドロ劇でした。

特に、主人公の掛居くん(筒井道隆)の周辺が本当にヤバい。 昔は「ちょっと陰のある、ミステリアスで母性本能をくすぐる男の子」だと思って温かい目で観ていた気がするのですが、大人の目で観るとただの「超一級・ヤバい女ホイホイ」でした。

一番の衝撃は、掛居くんの元カノ(というか、ズルズル関係が続いている)トキエさんです。 「男の部屋にこっそり下着を置いていく」くらいの嫌がらせなら、まだトレンディドラマの範疇でしょう。ですが、トキエさんの狂気はそんな生ぬるいものではありませんでした。

なんと彼女、なるみの部屋に突撃し、なるみの目の前で下着を脱ぎ捨て、「これが掛居に愛されてる身体よ」と言い放ち、そのまま下着を置いて帰るのです。

いや、恐怖のベクトルが強烈すぎるだろ!!! 嫌がらせの執念が完全にサイコパスの領域です。昼ドラでもなかなかお目にかかれないド直球の精神攻撃に、画面の前の私はフリーズ。中学生の娘の隣でこれ観る親の気まずさたるや、言葉になりません。

さらに恐ろしいのは、掛居くんが「もう別れよう」と切り出した瞬間です。トキエさん、なんとブスッと掛居くんの手にフォークを突き刺しました。 ホラー映画の間違いかと思いました。ピュアな恋愛ドラマの皮を被った、完全なるサスペンスです。

しかし、このドラマの本当に恐ろしいところは、ヒロインのなるみすらも、この泥沼の引力に吸い込まれて変貌していく点にあります。

最初はあんなに健気でピュアで、守ってあげたくなる可愛さだったなるみ。それが物語が進むにつれて、どんどん心が削られていった結果、 「24時間、私のことだけを考えてて!」 という、令和のメンヘラ界隈もびっくりな激重名台詞を爆誕させます。もうめんどくささの極みです。男側からしたら逃げ出したくなる重さ。

で、ここからが最悪の展開。 その激重なるみに耐え切れなくなった掛居くん、なんとあろうことか、また別のメンヘラ女と浮気するのです。

なんでだよ!!! ちょっとは学習してくれ掛居くん!!!

「ヤバい女に捕まる」→「耐えかねて純粋な女の子(なるみ)に行く」→「男の優柔不断さのせいで女の子が激重化する」→「耐えきれずにまた別のヤバい女に逃げる」

この地獄のような負のループが、毎週のように繰り広げられていたわけです。当時の若者たちは、一体どんな気持ちでこのドロドロのバトンタッチを見守っていたのでしょうか。

主人公に共感できなくて辛い!「なんやねんこの女」状態の社会人編

掛居くんのヤバさはさることながら、物語が進むにつれて、ヒロインであるはずのなるみ(石田ひかり)への共感メーターも、我が家では完全にアラートが鳴り響いていました。最初はあんなに純粋だったのに、泥沼環境のせいなのか、彼女の行動も大概やばいのです。

掛居くんの浮気が原因で一度は別れた2人。なるみとしてはやり直したかったものの、掛居くんが待ち合わせ場所に現れず失恋。実際は松岡くん(西島秀俊)が掛居くんに手紙を渡さなかったことが原因なのですが、振られたと思い込み傷心のなるみは、あろうことか、ずっと自分を支えてくれていたあすなろ抱きの主・取手くん(木村拓哉)と関係を持ってしまいます。

そこまでは「まあ、寂しかったんだよね……」と百歩譲って理解できなくもない。しかし、問題はその後です。

なんと、なるみは「なんで(取手くんと)寝ちゃったんだろう……」と大後悔。大好きななるみと結ばれてウキウキの取手くんとは反対にみるみる心の温度が急速冷凍されていくのです。この温度差、完全にホラーです。

そして極めつけは、ウキウキの取手くんが求めたキスを、なるみが拒否するシーン。

いや、取手くんがひたすら可哀想すぎるだろ!!!

都合のいい失恋の傷埋めに使われた挙げ句、冷徹にシャッターを降ろされる取手くん。キムタクをここまで不憫に扱えるヒロイン、後にも先にもなるみだけです。画面の前の私は取手くんに感情移入しすぎて涙が止まりません。

その後、掛居くんは大学を中退し、取手くんは海外へ旅立ち、仲間の松岡くんは亡くなり、星香(鈴木杏樹)は妊娠して実家に帰るという、嘘みたいな急展開であすなろ会は空中分解。ひとりぼっちになったなるみの大学編が終わり、物語は社会人編へと突入します。

「ここから大人のまともな恋愛になるのかな?」という淡い期待は、すぐに裏切られました。

社会人になったなるみは、偶然掛居くんに再会。これぞ運命!とばかりに心を躍らせるのですが、なんと掛居くんは「例の浮気したメンヘラ女と結婚する」と言うではありませんか。どこまでその女が好きやねん。

で、またしても傷心したなるみ、今度は会社の社長にしなだれかかります。 「私、今日は帰りたくないです……」と、大人の色仕掛けを発動。

一度は社長に大人の対応で断られるものの、その後オフィスで良い雰囲気になり、社長がその気になってキスをしようとした瞬間、なるみは放ちました。

「嫌っ!」

……えっと、なんやねんこの女!!!!(大混乱)

自分から「帰りたくない」としなだれかかっておいて、相手がその気になったらフるって、どんな高等な恋愛ツンデレテクニックですか。中学生の娘も、もはや「この人、何がしたいの……?」と完全に引き気味です。

ピュアで一途、健気で応援したくなるヒロインだったはずのなるみはどこへやら。大人になって観直すと、全方位に思わせぶりな地雷を撒き散らす「一番めんどくさい女」に変貌しており、全く共感できなくて観ていて逆に辛くなってくるレベルなのでした。

まとめ:美化された記憶の裏にあった泥沼劇

「ピュアで、綺麗で、切ない青春ラブストーリーだよ」

そう中学生の娘にドヤ顔で説明し、何年ぶりかにTSUTAYAでDVDを借りてまで挑んだ、20年ぶりの『あすなろ白書』。

フタを開けてみれば、ピュアどころか、全員が何かしらの地雷を抱え、全方位に思わせぶりな態度を撒き散らす、超高濃度のドロドロ愛憎劇でした。

最終回のエンディングを迎え、藤井フミヤさんの『TRUE LOVE』が切なく流れ切ったその瞬間、リビングにはなんとも言えない奇妙な静寂が訪れました。私と娘は静かに顔を見合わせ、ただただ「苦笑い」するしかありませんでした。娘の「……これがピュア?」という無言の視線が、今も胸に突き刺さっています。

しかし、声を大にして言いたいのは、「ある意味、めちゃくちゃ面白かった!!」ということです。

綺麗にパッケージングされた最近のスマートな恋愛ドラマとは違い、若さゆえのエゴ、理不尽さ、不器用さ、そして人間臭い生々しさがこれでもかと剥き出しになっています。

登場人物たちのこのめんどくささや、綺麗事だけで終わらせないリアルな感情の揺れ動きを、恐ろしいほどの吸引力を持つエンターテインメントに昇華させている。これだけの強烈な群像劇を描き切るなんて、やっぱり脚本の北川悦吏子さん、さすがだなとしか言いようがありません。

だからこそ、当時の若者たちはこの泥沼に強烈に引きずり込まれ、31.9%という異次元の高視聴率を叩き出したのだと、大人の今なら激しく納得できます。

記憶の中の綺麗な思い出のまま眠らせておくのは、本当にもったいない。ネット配信がないからこそ、わざわざTSUTAYAに走ってでも観るべき、間違いなく「今こそ見る価値あり」のドラマでした。

みなさんの記憶の中の『あすなろ白書』は、まだピュアなままですか? もしお時間が合えば、ぜひ一度、あの頃の答え合わせをしてみてください。きっと、1話目からひっくり返るはずです(笑)。

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